「帰去来」楽譜 ダ・カーポ or ダル・セーニョ?
昨年(2012年)9月に「帰去来」の楽譜を出版しました。
同楽譜の「校訂報告」に詳細を書いたのですが、
校訂作業を進めていた時には、初演者に渡ったであろう浄書譜(それが決定稿)の
所在がわかりませんでした。
その後、柳川の白秋記念館から、「自筆譜」(と言われている手書譜)の
「コピー」が見つかったという知らせをうけました。
見せていただいたところ、自筆譜ではなく、ミイによる筆写譜であることがわかりました。
ただし、初演者が使ったものではなく、
初演から10年以上過ぎた昭和35年頃
演奏したいが楽譜がない、というような問い合わせにこたえて
信時家にあった浄書譜を送ったもののようです。
昨年校訂した楽譜で、判断した部分が、正しかったかどうか、
気になる部分を調べてみたところ、ほとんど判断したとおりで大丈夫でした。
ひとつだけ残ったのが ダ・カーポ or ダル・セーニョの件です。
昨年出版した楽譜は、結局、第40小節に「D.S. al Fine」(セーニョまで戻って、フィーネで終わる)の
指示をいれて、第3小節の冒頭に「セーニョ」の記号を置きました。
新たに見つかった楽譜は、第40小節には「Da Capo al Fine」とあり
しかも、第3小節の冒頭に「*」の記号が付いています。
(自筆譜ではDa Capo al segno。詳細は「校訂報告」参照)
音楽記号ではない、この謎の*マークは、セーニョマークの代わりだろうと、私には思えるのですが。
Da Capo(冒頭に戻れ)と書いてあるとおり、曲の冒頭に反復記号も付いています。
第40小節から
「冒頭に」戻りたかったのか、それとも
「セーニョマークに」戻りたかったのか???
この謎は解けませんでした。