シアター・ピース「ニッポン・歌の花籠」
12月17日、山下公園前の神奈川県民ホールで、シアターピース 合唱でたどるニッポン・歌の花籠 を聴いて来ました。横浜市立大学混声合唱団の第44回定期演奏会。『「国民歌」を唱和した時代―昭和の大衆歌謡』などの著書がある戸ノ下達也さんの企画構成。藤井宏樹指揮、しままなぶ演出。以前、山梨県で演奏されたシアターピースの「横浜初演」です。
プログラムには、「明治から昭和に至る一世紀余りの時代の諸相を「うた」から再考する試み、」とあります。
一応明治以降の洋楽を専門としてきた私ですが、改めてこうして聴いてみると、「なるほどそういう意味があったのか」と思うところもあります。
明治のうたから、順にたどって、信時潔の「子等を思ふ歌」を聴くと、なるほど借り物の讃美歌の響き(小学唱歌)、女学生の歌、学校唱歌から一歩出て、「唱歌」を合唱で歌うのではなく、「合唱」するための「合唱曲」が生れた、それがこの曲だったのだと感じます。
シアターピースの筋書きの中で歌われた「海ゆかば」。冒頭の「Mestoso」をどう歌うべきか、どういう気持ちで歌うのか、考えさせられます。
そのほか、それぞれの時代を語る「うた」全26曲を、趣向を凝らした衣裳のメンバーが歌ったのですが、大掛かりな装置もなく、さりげない演出ながら、曲を追うごとに舞台上の空気が変わり、その時代の衣裳が浮き上がって見えて、シアターピースとしての効果はすばらしいものでした。
「死んだ男の残したものは」は、何度か聴いた曲なのに、今回の演奏で、再び涙してしまいました。
谷川俊太郎、武満徹はすごいです。そして、なにより演奏がすばらしかったです。
ここで、ジーンとしてしまって、このまま終わったらどうしよう・・・と思いましたが、そのあと、髙田三郎の「雨」、そして佐藤眞の「大地讃頌」でクライマックスを迎え、感動のうちに終演。若い皆さんの熱い演奏でした。
追記 「音楽挺身隊歌」と「大地讃頌」、どちらも作詩は大木惇夫なのでした。