雑記帳(Q&Aなど)

寄せられた質問への回答、そのほか日々の資料整理作業の過程で思うことなど、
Q&A方式で随時書き連ねて行きたいと思います。
Q

05.信時潔作曲「海ゆかば」は、大正12年(1923)の作曲ではありません。(2005.9.1)

A

「海ゆかば」大正12年説が、根強く残っているようです。

発端は何か、いまひとつわかりませんが、LPレコード『信時潔作品集』の解説に「これは戦争目的の歌ではなく、彼がドイツから帰国した年の作品である」と書かれています。
(帰国した年は正確には大正11年です。)

その再版CD、解説の転載の折にも直されていませんので、ますます広まってしまったようです。
それらからの孫引きなのか、「伝説」のように「ふつう昭和12年といわれていますが、実は大正12年です」といった書き方が、かなり多くみられます。

しかし、自筆譜(楽譜帳)の前後の作品、放送局の記録などから、昭和12年であることは、ほぼ確実です。
本人が作曲の経緯を語った「問はれるままに」(雑誌『心』 10巻9号 1957年9月号)にも、「あれは放送局に頼まれたのでした。国民精神総動員とかいふわけで、・・・」とあります。
2005年に発売された、CD『海ゆかばのすべて』やCD『復刻盤 海行かば集』(CDのページに掲載)の解説にも、詳しい情報が掲載されていますのでご参照ください。