雑記帳(Q&Aなど)

寄せられた質問への回答、そのほか日々の資料整理作業の過程で思うことなど、
Q&A方式で随時書き連ねて行きたいと思います。
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質問をいただきましたので、正確な所在地を確認しました。

東京都豊島区の雑司ヶ谷霊園。場所は、1種15号18側18番。

A

信時潔の作品としての「海ゆかば」は「行かば」ではなく「ゆかば」に統一して表示していきたいと思います。

自筆譜、初版譜、初放送当時の記録などを検討のうえ、作曲者はそちらを取りたかったらしいことを確認し、そのように結論付けました。
キングレコードのCD「海ゆかばのすべて」もその方針をお伝えしてご検討いただいた結果、「海ゆかば」となりました。

解釈はいろいろだと思います。元々が万葉仮名ということを考えれば、どちらが正しいともいえないのは承知しています。
しかし、たとえばインターネットで検索するにしても、「ゆかば」と「行かば」と両方で検索をかけないと検索しきれないというのは不便なことこのうえありません。
2005年8月現在、たとえばgoogleで「海ゆかば」は18,400件、「海行かば」は6,690件ヒットします。(もちろん信時潔の作品とは関係ないものも含まれます)

今後、信時潔作曲「海ゆかば」については「ゆかば」に統一していきませんか、というのが私からの提案です。
(JASRAC 登録は「海行かば」となっているようですが、事務的な必要から作曲者没後に登録されたもので、とくに「海行かば」とする理由は見当たりません)

A

Wikipedeiaの「信時潔」の項で、「『女人和歌連曲』はカワイ出版のオンデマンド出版で得られたとのことであるが、2005年7月現在リストにない」とのご指摘がありました。
(2005年8月16日確認)

確かにカワイ出版のホームページの「オンデマンド出版」のリストには掲載されていませんが、出版社の担当者に電話で確認した上で掲載しています。
以前『リーダーシャッツ』に掲載されたことがあるので、版下は確保できている、5部以上で、注文から2週間程度で用意できる、とのことです。

正規の方法が用意されていますので、安易にコピー譜を作成することなく、ぜひお問い合わせの上、ご利用ご検討ください。

A

別冊太陽 『気ままに絵のみち 熊谷守一』
(平凡社 2005年7月20日発行 表紙画像はこちら)
に「信時潔著/熊谷さんのこと」が再録されました。

画家熊谷守一の人柄や画を紹介し、氏の還暦に寄せて「益々元気に勝手な仕事をやられるよう望む」と結んでいます。
初出は『みづゑ』1940年12月号。

A

「海ゆかば」大正12年説が、根強く残っているようです。

発端は何か、いまひとつわかりませんが、LPレコード『信時潔作品集』の解説に「これは戦争目的の歌ではなく、彼がドイツから帰国した年の作品である」と書かれています。
(帰国した年は正確には大正11年です。)

その再版CD、解説の転載の折にも直されていませんので、ますます広まってしまったようです。
それらからの孫引きなのか、「伝説」のように「ふつう昭和12年といわれていますが、実は大正12年です」といった書き方が、かなり多くみられます。

しかし、自筆譜(楽譜帳)の前後の作品、放送局の記録などから、昭和12年であることは、ほぼ確実です。
本人が作曲の経緯を語った「問はれるままに」(雑誌『心』 10巻9号 1957年9月号)にも、「あれは放送局に頼まれたのでした。国民精神総動員とかいふわけで、・・・」とあります。
2005年に発売された、CD『海ゆかばのすべて』やCD『復刻盤 海行かば集』(CDのページに掲載)の解説にも、詳しい情報が掲載されていますのでご参照ください。

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大江一二三作歌、信時潔作曲「やすくにの」の、現在入手可能な録音資料について、問い合わせがありました。

下記の書籍の「特別付録CD」に、「海ゆかば」と共に収録されています。

 小川寛大著 『「海行かば」を歌ったことがありますか』
 エイチアンドアイ 2006年1月発行 ISBN 4-901032-84-4
 演奏:田中和恵、ウェケ暁子、小島海治、井上高男(歌) 柳津昇子(ピアノ)
  ↓
 2008.12.20更新
 昭和18年の幻の録音が、金属原盤から復刻されました。
 2008年11月発売の『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』のDISC-5に収録されています。

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春秋社版『信時潔合唱曲集』のp.90 1段目「ももへなる」は、歌詞、自筆譜、初版譜(単行譜・共益商社書店)などを検討した結果、「ももへなす」が正しいことを確認しました。 

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春秋社版『信時潔独唱曲集』の巻末歌詞p.5 2段目最後から2行目 「踊、踊、身をば斜めに袂をかざし」の「袂」ふりがなは、「たも」とありますが、正しくは「たもと」です。
歌詞、自筆譜、初版譜(単行譜・大阪開成館)などを検討した結果、「みをばななめに たもとをかざし」が正しいことを確認しました。

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春秋社版『信時潔独唱曲集』の楽譜ページに2番3番の歌詞が付されていないため、とくに次の部分について音の割り振りがわかりづらくなっています。

p.58の3段目からの「さはれ さかりの」の部分。
p.58の最下段からの「ゆうべを またで」の部分。

自筆譜、および初版譜『小曲五章』(大阪開成館 昭和2年)で確認したところ、こちらの通りでした。

3段目

img027 (1).jpg

下段

img028.jpg

なお、同曲については、雑記帳No.29もご確認ください。

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春秋社版『信時潔合唱曲集』のp.8 テノールパートの第四小節最後の八分音符「g」は、自筆譜、初版譜等、比較検討の結果、正しくは「a」であることを確認しました。

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『海道東征』ヴォーカル・スコア(初版)の正誤表が見つかりましたので、ここに掲載します。
ご覧いただける通り、謄写版印刷されたもので、おそらく初演やレコード吹き込みのために作られた正誤表のようです。

ヴォーカルスコアの初版は昭和15年(1940)8月、再版は昭和16年6月で、再版では修正されています。なお、印刷された正誤表なので、公開しましたが、演奏等のために正すべき部分はこの限りではありません。
ヴォーカルスコアの訂正箇所に関する最新の情報は、この雑記帳ページのQ37をご覧ください。

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信時潔に私淑した作曲家・益子九郎について、問い合わせがありますのでこちらに略歴と作品表等を作成・掲載しました。

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詩についての解説は、下記の資料がもっとも詳しいようです。
日本名歌曲百選 詩の分析と解釈 音楽之友社(1998.03)
畑中良輔監修、塚田佳男選曲・構成、黒沢弘光解説
 「我手の花」と、組曲「沙羅」の各曲については各1ページづつ、
 「茉莉花」については2ページの「詩の分析と解釈」が書かれています。
収録楽曲詳細はこちらに書いています。http://noblogblog.blog.shinobi.jp/Entry/71/

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2012年8月、音楽之友社より、以下の訂正を始めとする修正が入った改訂新版が発行されました。 
2013年3月には改訂新版第2刷が出ています。以下の記述は改訂前の楽譜に関するものです。
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音楽之友社から、現在オンデマンド出版されている男声合唱組曲「沙羅」の楽譜の間違い箇所について。
編曲者木下保の三女で、長年木下編曲「沙羅」のピアノ伴奏を弾いていらした増山歌子先生より、下記の情報が寄せられました。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*-―*―*―*
男声合唱組曲「沙羅」校正箇所

3p.4小節目2拍目: 左手 3連音符 h,e,g→h,d,g。(自筆譜確認済み)
3p.8小節目3,4拍目: セカンドテナー 4分音符 g→fis。
 (演奏者の判断によるが、ピアノの和音を照らし合わせるとfisの方が良いとも思われる)
10p.5小節目1拍目: 右手 4分音符 gis,d→f,gis,d。(12小節目と同じ)
12p.9小節目1拍目: 右手 付点4分音符 f→4分音符。
       2拍目裏:8分休符を取る。
16p.6-7小節目:  ペダル記号を付け加える。
(最後の小節ppの所は、沙羅の花びらが落ちる表現を生かすためペダル無し)
20p.11小節目2拍目: 右手16分音符 アクセント記号を取る。
21p.4小節目3拍目: 右手8分音符 e, gis→4分音符。(高音のhとcisのみ8分音符)
21p.9小節目2拍目: 右手16分音符 アクセント記号を取る。
22p.8小節目1拍目(最後の小節):dim.の線を無くしてppの記号を1拍目に移す。
27p.14小節目1拍目: 3つのナチュラル記号(c, a)は必要無いので取る。
27p.15小節目(最後の小節):自筆譜によりペダルを付け加える。
28p.8小節目3拍目: テナー c→es,セカンドテナー a→c 。
30p.8小節目?9小節目:ピアノの部分のdim.の記号を一つにする。
31p.3小節目3拍目裏:右手8分音符 desの♭は必要無いので取る。
31p.8小節目(最後の小節):ピアノにペダル記号を付け加える。

<校正ノート>
*ピアノの部分の校正が圧倒的に多いので「右手」「左手」とのみ記した。
*ペダルに関しては、自筆譜により作曲者自身の手で書かれた部分3p.16p.27p.30p.31p.のみ記し長さを修正したが、出版されている独唱曲においては信時夫人のミイが清書したペダルの長さになっている。
*合唱の部分の強弱の記号については、木下保自身の演奏経験によって付け加えられている。
*今回合唱組曲の編曲の元となった"慶応義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団のために 男声合唱曲「沙羅」"の楽譜等も参考にして校正した。
*スラーとペダル記号は自筆譜により最小限度記した。
                            増山歌子(ピアニスト)

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CDの案内ページにも書いていますが、現在数種類が入手可能です。
全曲 女声
 小倉百人一首より 独唱 林裕美子 伴奏 中村展子
 --- in 『日本歌曲 山田耕筰歌曲(II) 信時潔の歌曲 』 (2枚組)
         ファウエム ミュージック コーポレーション FMC-5051-2  税込¥4,200


全曲 男声
 小倉百人一首より 独唱 岡田征士郎 伴奏 江頭義之
 --- in 『日本歌曲  岡田征士郎  日本歌曲集』
         ファウエム ミュージック コーポレーション FMC-5042
    税込¥2,940

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全曲は以上の通りですが、このほかに以下のような抜粋もあります。
抜粋 淡路島・久方の 独唱 荻野綾子 伴奏 管絃六重奏
 --- in 『SP音源復刻盤 信時潔作品集成 』
    日本伝統文化振興財団 VZCC-85?90
    税込¥15,750

抜粋 月見れば、長からん、人はいさ、久方の、花の色は、淡路島
        独唱 柳兼子 伴奏 小林道夫
 --- in 『日本の心を唄う 現代日本歌曲選集 第2集 』 
    オクタヴィア・レコード AUDIO LAB RECORD  OVCA-00003
        税込¥2,500 →Amazonサイトへ

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毎年5月に行われる奏楽堂日本歌曲コンクール【歌唱部門】。今年の二次予選課題曲は、「信時潔の作品より任意の1曲」だそうです。
第一次予選の課題曲20曲の中には「行々子(よしきり)」も、含まれています。

同コンクールの運営委員長は畑中良輔氏。歌唱部門審査委員長は瀬山詠子氏。

歌唱部門入賞者に贈られるメダル「木下記念賞」は、「沙羅」の全曲初演、その後の普及、そして日本歌曲の振興に尽くされた故・木下保氏の遺志を継ぐ「木下記念日本歌曲研究会」の寄託により授与されます。

昨年は、歌唱部門の応募者が233名あったそうです。今年の申し込み期間は2月6日から3月6日。
よく歌われる組曲「沙羅」のほか『信時潔独唱曲集 』に掲載されている様々な曲に挑戦してくださる方が増えれば嬉しいです。

詳しくは、旧東京音楽学校奏楽堂ホームページ、及び奏楽堂で配布している応募要項(郵送も可)でご確認ください。

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このサイトを、日本歌曲を歌うときの参考にしてくださる方が増えているようです。

そこで、今回は父・木下保のあとを継ぎ、「やまとことば」の歌い方を研究され、演奏及び後進の指導に当たられている坂上昌子先生の論文を紹介します。

坂上昌子著 「信時潔の作品と”やまとことば”」
(昭和62年7月 私家版)B5判 全15ページ

本文中には、やまとことば発音表も掲載されています。また、「沙羅」や「小倉百人一首より」「小曲集」「小曲五章」などの歌い方を記した、木下保著「歌唱について」も転載されています。

木下記念スタジオに残部があるそうです。

同じく坂上昌子による「和歌を題材とした日本歌曲一覧」と共に
「やまとことば2冊セット」として1,000円 (送料込)
(連絡先:木下記念スタジオ 増山歌子 電話、FAX 045-981-9868)

※声楽家・坂上昌子先生は、木下保先生の長女、増山歌子先生は三女

2012.9.15追記  増刷されました。
坂上昌子著「信時潔の作品と“やまとことば”」「日本歌曲における“やまとことば”の歌唱法と発声法」
    2冊セット 1,300円(送料込み)
<購入希望 連絡先>
Email: utakomasuyama☆a08.itscom.net
     (☆をアットマークに変更してください)



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信時潔のことや、益子九郎蔵書を調べている過程で、昭和戦前期の『音楽教育研究』『音楽教育』という雑誌の存在が気になり始めました。
いままでこの雑誌のことをとりあげた文献は意外と少なく、調べているうちに総目次を作ってみることを思い立ちました。(経緯は「まえがき」に書いてあります。)

ご縁あって、『文献探索2008』に掲載が決まり、金沢文圃閣より刊行されました。

そのPDF版を、これまで当サイトで公開していましたが、その一部修正版が、2021年10月、東京音楽大学リポジトリで公開されたので、リンク情報を変更します。
 
信時裕子編 昭和戦前期『音楽教育研究』『音楽教育』総目次
 http://id.nii.ac.jp/1300/00001381/

今までこのサイトで公開していたものとPDFファイルの編集が変っていますが、雑誌目次の内容そのものは変更ありません。リポジトリでの公開に当たって、古くなってしまった情報に修正を入れています。

 ※益子九郎の蔵書には、『音楽教育研究』『音楽教育』全42冊中22冊が含まれています。(日本近代音楽館「益子九郎文庫」所蔵)。その他の巻号は、CiNii Books - 大学図書館の本をさがす - 国立情報学研究所で、所蔵館が確認できます。

WEBサイトでの公開につきご理解くださった深井人詩先生に御礼申し上げます。

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これまでWEB上に掲載していた上演記録の改訂版《海道東征》上演記録(1940.11-2015.11)を、東京藝術大学「信時潔没後50周年記念演奏会 海道東征」プログラム p.22-25 に掲載しました。

部分上演、ピアノ伴奏上演を含めた全公演データの件数は101。
回数不明の公演もありましたので、公演回数は101を上回ります。

(旧版は、データの不足や間違いがあったため、本サイトから削除しました。)

更に最新の情報を追加したデータベースを公開しています。

https://nobutoki.com/kaido_tosei_performance

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春秋社版『信時潔合唱曲集』のp.53 最上段のバスパートの第一小節の音符「f」は、正しくは「fis」(シャープをつける)、同じ段、テノールの第三小節の最後の八分音符「b」は、正しくは「h」(ナチュラルをつける)です。 

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「音楽は藻の花の如く、衣裳をまとわずに、自然に、素直に、偽りのないことが中心となり、しかも健康さを保たなければならない。たとえ外形がいかに単純素朴であっても、音楽に心が開いているものであれば、誰の心にもいやみなく触れることができるものである。」
これは、音楽評論家の富樫康先生が、信時潔に「自己の作曲上の所信について質した」のに対しての答えだそうです。 (富樫康著 『日本の作曲家』 音楽之友社 昭和31年 p.227?231)

これが、最近引用される時に、「音楽は野の花の如く、・・・・・」と引用されているのです。「野の花」と引用されたものを読んだ方が、それを引き継いで(つまり孫引き)書いているのでしょう。確かに、「衣裳をまとわずに、自然に、素直に、偽りの無い」というのは「野の花」の感じです。
最初に引用した「藻の花」とある文章の初出は、雑誌『音楽芸術』8巻9号 1950年9月の「現代日本作曲家群像--信時潔」 http://opac.ndl.go.jp/articleid/5264032/jpn  ですが、初出でもやはり「藻の花」とありました。念入りなお仕事をなさる富樫康先生ですから、連載を単行本にされるとき、もう一度目を通されたでしょう。単なる誤植とは思えません。取材した折に「藻」と「野」を聞き間違えたということは考えられます。
「野の花」に比べて「藻の花」という言葉は、日常生活ではあまり聞きませんが、実際に「藻の花」というものはあって、万葉の時代から季語になっているようです。
富樫康先生とは、仕事で何度かご一緒したことがあります。あるとき、上記『日本の作曲家』のp.230にある作品表の年号の欄で、大正を表す「大」は、正しくは「昭」ではないかとお尋ねしました。確かに、「大」は「昭」の誤植で、桜花の歌、阿蘇、痩人を嗤う歌2首、そして海ゆかばも、大正ではなく昭和の作品とのことでした。
その当時は「藻の花」という言葉に意識が行っていなかったので、質問もしませんでした。富樫先生亡き今、真相を確認することは出来なくなってしまいました。
そのようなわけで、「野の花」のほうがこの内容に似合いそうだから、と判断して「藻の花」を「野の花」に書き換えてしまうことは、私にはできないのです。
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2010年2月に発売されたDVD『NHKクラシカル 山田一雄指揮/NHK交響楽団 』 (NHKエンタープライズ)の特典映像として「喝采!指揮棒ひとすじ 山田一雄 指揮者生活50年」(1990年12月24日放送)が収められています。その中で、山田一雄の師の一人として信時潔が登場しています。愛用のピアノの前で、ほんの数秒ですが、コメントとピアノを弾く姿が映っています。貴重な映像です。

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googleやyahooなど各種検索サイトで「校歌」を検索して当サイトにたどり着く方が多いのですが、信時潔作曲ではない校歌を探してみえる方が増えています。
当サイトで扱っているのは信時潔作曲の校歌だけで、がっかりされた方も多いと思います。そこで、ささやかながら「校歌に関するパスファインダー」(情報検索への道しるべ)を作ってみました。


校歌に関するパスファインダー

 注意:2010年の公開後、情報を更新していませんので、ご承知おきください。(2021.09.03記)

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1963年、信時潔が文化功労者に選ばれたことを記念して放送された番組のテープが我が家に残っていましたので、文字に起こしてみました。(信時裕子)

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特別番組 桜花(はな)の歌
   出演 信時潔
   M=男性アナウンサー F=女性アナウンサー

M: 今日文化の日。作曲家信時潔さんは日本音楽界に貢献した多年の功績を讃えられまして、晴れの文化功労者に選ばれました。幼く貧しかった日本の音楽を今日まで育んで来られた信時潔さんは武蔵野の面影を残す東京都下国分寺町の一隅に今なお尽き果てぬ芸術の道のりの高さを極め続けています。今日はこれから30分にわたりまして、信時潔さんの作品をご紹介し、ご一緒に文化の日の喜びを分かち合いたいと思います。はじめに信時さんのご挨拶をご紹介いたしましょう。

信時潔: 全国の皆さん、わけて若いかたがたに今日文化の日のお喜びを申し上げます。このめでたい日の番組に私の曲のいくつかを加えていただきまして、まことに嬉しくありがたく存じております。今日の曲の歌詞は、日本の古典的和歌から一つと、明治大正昭和にわたって日本の詩壇に天才的なお仕事を残されました與謝野晶子さんの詩。やはりその頃詩と短歌に色々、力強く、感激感銘の深い作品を残されました、林古渓先生の詩「阿蘇」と、私の若いお友達で、特異の詩才を示されました清水重道さんの詩、「丹沢」とでございます。

F: 信時潔さんの作品集は日本の国の花、桜の花を歌いました歌曲集から「いにしへの」に始まります。

  <演奏「いにしへの」>

M: 昭和の初め、信時さんの教えを受けたあるピアニストのアルバムに、当時東京音楽学校の生徒から成るオーケストラ全員の写真がありました。写真の真ん中にはチェロをかかえた信時さんが見え、それはいがぐり頭でした。当時洋行帰りの若い音楽家で、いがぐり頭は信時さんだけではなかったでしょうか。関東大震災の後、当時は住む人とてほとんどなかった国分寺の在に居を移された信時さんは、武蔵野の林をわけて汽車で二時間の道のりを上野まで通ったといいます。信時先生の授業は常に情熱に溢れた名講義だったと、そのピアニストは言います。ただし、時々はいがぐり頭をかくことに辟易しなければならなかったこと、また先生のお近くに寄ると汽車の匂いがしたこと、40年に近い昔を懐かしむのです。

F: 今もなお千古不滅の煙を吐きつづける山、雄大な阿蘇の山を歌いました林古渓作詩「阿蘇」は信時さんの作風を最も簡明に表した曲でございましょうか。

  <演奏「阿蘇」>

M: 信時さんの雄渾な作風は、私たちがこの国に寄せる愛情にも似ています。信時さんの歌曲集に小曲五章があります。女流詩人與謝野晶子の詩によるものです。晶子の詩の中に光る真実は、ここに歌となって昇華しました。

F: いづくにか、うら淋し、薔薇の花、我手の花、子供の踊。この五曲から成る歌曲集は、またなんと優美な旋律の集まりでございましょう。その中でも桃や桜の花咲く庭にたわむれる、幼きものたちの姿を讃えた「子供の踊」、花に托して純潔な心を歌った「我手の花」は、多くの少女たちにとって、いつまでも口元から離れぬ調べ達です。

  <演奏「子供の踊」>

M: おおらかに日本人の魂を歌う歌。私たちが信時さんの作品に接して先ず思うことはこの一言に尽きます。ベルリンに留学し、ゲオルグ・シューマン教授の元に厳格なドイツ和声を学ばれた信時さん。東京音楽学校の教授として教壇に立つかたわら、救世軍の伝道者として街に立ち、基督の教えを説かれた(※注1)信時さん。その信時さんの作品は一点の揺るぎもない厳格な和声の上に古い歴史に培われた日本人の心が淀みなく拡がって行きます。日本に音楽教育を創設した伊澤修二、小山作之助らの優れた薫陶を受けた感動が魂の主流となっているためでありましょうか。大正十三年、母校の教授に迎えられた年(※注2)、若い詩人清水重道の詩によって作った8曲からなる歌曲集「沙羅」が発表されました。この歌曲集こそ大正時代(※注3)の日本に生まれた最もすぐれた芸術歌曲集であり、年とともにその美しさは磨かれています。胸を打つ魅力に溢れた歌曲集「沙羅」から、第一曲「丹沢」をお聴きいただきましょう。

  <演奏「丹沢」>

M: 私たちは本当はまだまだたくさん信時さんのお作りになった歌を知っています。知っているばかりではありません。小学校に入ったばかりの頃から、みんな歌っています。私たちはまた、信時さんがお作りになった「海ゆかば」の響きを耳の底に覚えています。この歌がたまたま戦争の悪夢に結びついて記憶に残らねばならなかった事は、私たちの不幸でした。しかし矢張りその頃にお作りになったもう一つの歌に接する時、私たちは信時さんがどんなに深い嘆きをこらえながら、あの苦難の時代を生きたかを垣間見ることが出来る思いがします。

F: おかあさんおかあさんと繰り返し呼び続けながら大陸に若い命を失った一人の将校がいました。その将校と、彼の愛していた母親の嘆きとに捧げられました一つの詩は信時さんの心を激しくゆすぶりました。

  <ピアノ演奏及び朗読「やすくにの」>

M: 時はうつろい、この国の姿も大きく変わりました。しかし変わらぬ真実が私たちを支えています。その昔、教え子の一人だった木下保さんも、もう還暦のお祝いをお迎えになりましたが、そのお祝いに歌われた歌は、信時さんが万葉集の古歌によって作られた歌でした。万葉の昔に戻ること、それはかつてヨーロッパがギリシャの昔に還れと呼びかけあってルネサンスの耀かしい文化を築いたように、私たち日本人に本当のたくましさと勇気を与えることになりましょう。はるかに俗人を超えて今日もまた、ひたむきに音楽の道を歩み続ける信時さんの姿は、いにしえの野に咲く万葉人のそのままと申せましょうか。

  <演奏「やまとには」>

信時潔: ここで皆様に一つお願い申し上げたいことは、明治以来、国定その他の形での小学唱歌、中学唱歌が数々ございますが、それらの作詞者、作曲者のお名前は当時の事情で公表されてないものもたくさんございますが、いずれも我国の音楽界の大先輩たる伊澤修二先生、小山作之助先生、島崎赤太郎先生、岡野貞一先生、そのほかの方々の心魂を打ち込まれたものでございまして、形はたとえ小さくとも、我国の青少年の情操を養うのに大きな力となって来たかと思います。どうかそのことをお考えになりまして、これらの唱歌を大事に取り扱って下さるよう、年寄りの一人としてお願い申し上げます。なお、近頃では学校を始め、いろんな場所で歌を歌うことが増えてまいりましたが、歌っていうものは特別の人たちが歌うのを聴くばかりでなく、大勢で、誰も彼もが、上手でも下手でも、一緒に歌うことが音楽っていう共有の宝を生かし、その本来の使命を発揮するために最も大切なことと存じます。いかがでしょう、全国どこでも、もっと盛んに歌声を上げようではありませんか。ではみなさん、お元気で。

M: 文化の日特別番組、信時潔さんの作品を集めて。演奏は、独唱及び合唱:東京プロムジカ・アンティカ。合唱:日本女子大学合唱団、慶應義塾ワグネルソサイエティ男声合唱団、ピアノ:辛島輝治、以上の皆さんでした。

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(※注1)「伝道者」「基督の教えを」という点については、噂話的に拡がっているが、どの程度のことだったのか確証はなく、今後更なる検証が必要。
(※注2)母校の教授となったのは大正12年。「沙羅」が作曲されたのは、昭和11年頃。詳しくは「SP音源復刻盤 信時潔作品集成」解説書参照。
(※注3)歌曲集「沙羅」は大正時代にはまだ作曲されていない。同上書参照。

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歌曲『沙羅』の第一曲、清水重道作詩「丹沢」の歌詞について、質問があったのでこちらにも書き留めておきます。

歌詞の中の「塔のむかふ 町並光らせて 秦野」という部分の「秦野」の読みについて。信時潔作曲の「丹沢」楽譜では読みが「はの」となっています。丹沢から見える「秦野」とは、神奈川県秦野市あたりだと思われます。秦野市のホームページにも「はの」とあるように一般的に「はの」と読むようです。Wikipediaの「秦野市」には、「はだの」と「はたの」についての言及もあります。

この件については、以前、畑中良輔先生からも「地名としては はだの のはずだけれど」という質問をうけた覚えがあります。信時潔の楽譜中の歌詞のひらがな書きの部分や、別掲歌詞は、自筆譜から、妻ミイによる浄書譜、初版譜、その後の出版譜まで、一貫して「はの」です。決して誤植ではないことをお伝えしました。

信時潔が清水重道から受け取ったであろう歌詞原稿には、ルビがふられていたのでしょうか?同じ「丹沢」の歌詞の中の「檜洞(ひのきぼら)」とか「崩土(がれ)」にルビがふってあるように、ふってあったのかもしれません。清水重道の歌詞原稿は見つかっていないので、これ以上の確認はできません。

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信時潔作曲の「海道東征」「木の葉集」「沙羅」「海ゆかば(チェロ版)」を収録しているロームミュージックファンデーション『日本SP名盤復刻選集』の解説DVDが発行されました。

全体の解説は片山杜秀さん、クリストファ・N・野澤さんが担当されます。チャプター5 の家族が語る音楽家たちの素顔 には、信時潔の話も登場します。

http://micro.rohm.com/jp/rmf/music5/では、一部の動画が公開されています。このDVDは市販されませんが、音楽学校、図書館等へ配布(寄贈)されるそうです。

DVDの案内ページhttp://micro.rohm.com/jp/rmf/music5/dvd01.html

企画・発行: 公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション
協賛: ローム株式会社
製作: 株式会社日本音声保存 製作
著作: 株式会社テレビマンユニオン
出演者: 海老澤 敏、クリストファ・N・野澤、片山 杜秀、新 忠篤、
山田 耕筰、信時 潔、江 文也、倉田 高のご遺族のみなさま
ナビゲーター: 松本 志のぶ

ロームミュージックファンデーション 信時作品収録
 『日本SP名盤復刻選集  』 CD5-3 「木の葉集」               
 『日本SP名盤復刻選集 II 』 CD4-1 「海道東征」                
 『日本SP名盤復刻選集 III 』 CD2-3 「海ゆかば」(チェロ版) 
 『日本SP名盤復刻選集 IV 』 CD5-11 「沙羅」                     

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春秋社版『信時潔合唱曲集』のp.10 二段目 バスパートの第三小節 第四拍は八分音符「C・D」とありますが、自筆譜、初版譜では、「E・FIS」であることを確認しました。
参考のため、初版譜の該当部分をこちらに掲載します。 なお、1950年春秋社版の翌年に音楽之友社から出版された『信時潔合唱曲集』(信時潔編)も、「E・FIS」となっています。


春の弥生


「春の弥生」初版譜
冒頭から 第7小節
バスパート

出典:『日本古謡に拠る三つの合唱曲1 春の弥生』
新響社 1924年9月刊
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春秋社版『信時潔独唱曲集』の小曲五章「我手の花」p.58の10小節目のピアノ伴奏4拍目について問い合わせがあり、自筆譜を確認したところ下記の通りでした。

     春秋社版(誤)

shunwagate.jpg

 ↓   (正)

なお、同曲については、雑記帳No.09もご確認ください。

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『信時潔独唱曲集』(春秋社) の楽譜(p.153)、および別掲歌詞(後付 p.11)とも、「ほゝゑ」とルビがあるが「ほゝゑみ」ではないか?という質問があり、調べてみました。

大阪開成館(大正十四年四月)の初版譜には、楽譜中は「ほほ-ゑは」とあり、別掲歌詞でも「微笑は」の漢字の横には「ほゝゑ」のルビがあります。
自筆譜は、スケッチが数種あり、書き込みも多く、完全な形の決定稿は残っていません。「ほほゑ」にあたる部分の表記は確認できませんでした。

次に、原詩について、「国立国会図書館デジタル化資料」で確認してみました。『有明集』 蒲原有明 著 (易風社  明41.1)は、信時潔の曲と同じです。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904712/14

また、『有明詩集』 蒲原有明 著 (アルス 大正11)では、初版の「君が微笑はわが身の痍を」の部分が、「君がほほゑみは、いよゝしみらに」に、つまりルビや送り仮名だけでなく、詩もかなり変わっていました。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/970193/87
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/970193/88

なお、信時潔作曲の「茉莉花」は、初版は大正14年ですが、大正8年に、東京基督教青年会主催の会で、外山国彦の独唱により演奏された記録があります。
信時潔は、おそらく明治41年の『有明集』を手にして、作曲したものと思われます。「寂静」「偶感」「音もなし」「皐月のうた」(未刊)、「おもひで」「ルバイヤットより」「人魚の海」(未完)など、信時作曲の蒲原有明作品は、すべて同詩集に収録されています。

追記(2012.06.21)
畑中良輔先生は、「ほほゑみ」と歌わせていたらしい、という話を聞いたので、2005年8月1日青の会第81回演奏会のDVD(青の会を主宰されていた畑中先生より拝受)を確認してみました。確かに、この時の片岡啓子独唱「茉莉花」(伴奏:塚田佳男)は、「ほほゑ」と歌っていました。

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時々問い合わせがあるので、書き留めておきます。
「沙羅」の第二曲「あづまやの」の歌詞で「さみだれに わがとひくれど かどさして」という部分があります。
春秋社版の楽譜は「さみだれに」ですが、巻末の別掲歌詞は「さみだれを」とあります。
そこで各資料を確認してみました。


1 自筆譜 楽譜中 別掲歌詞なし
歌詞原稿未確認
2 浄書譜 楽譜中
3  同 別掲歌詞
4 初版譜(共益商社書店 1936) 楽譜中
5  同 別掲歌詞
6 春秋社版(1950) 楽譜中
7  同 別掲歌詞
8 東京音楽研究会版, 1969(木下保編著) 楽譜中
9  同 別掲歌詞
10 音楽之友社(合唱・木下保編曲) 楽譜中
11  同 別掲歌詞


上の表で、1が「を」で、2を浄書するときに書き間違えたと考えることもできます。
作曲者旧蔵の4は、何箇所か書き込み修正があります。
楽譜中の歌詞で「さみだれに」の「さ」は、訂正書き込みがありますが「に」はそのままで、修正はありません。



作曲者は、何度も演奏者の演奏はもちろん、練習に立ち会ったり、自宅でレッスンを頼まれたりしていてその時には4 や 6、の楽譜を譜面台に置いて、伴奏していました。
畑中良輔先生が「ハラの力が足りません」と言われたというレッスン(SP音源復刻盤「信時潔作品集成」別冊解説書の序文ほか)のあとの演奏会の録音テープを確認したところ、やはり「に」で歌っています。
(1965年7月6日 二期会日本歌曲研究会「第一回演奏会信時潔の夕べ」)

8、9 では、編著者が、別掲歌詞と楽譜中の歌詞が違うことに気づいて、修正したようです。木下保編曲の合唱曲「沙羅」も同じように、「に」になっています。

というわけで、さみだれ「に」と歌って良いのだろうと、私は判断しています。現在のところ、清水重道の原詩は、確認されていません。

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組曲「沙羅」の移調楽譜の問い合わせがありました。
現在確認できたものは下記の通りです。
独唱
 資料1. 「沙羅」 共益商社書店 1936 独唱
 資料2. 「信時潔独唱曲集」 春秋社 1950 独唱
 資料3. 「信時潔歌曲集」 東京音楽研究会 1969 独唱
 資料4. 「日本歌曲全集6 信時潔」畑中良輔監修 全音楽譜出版社1993 独唱
 資料5. 「日本名歌選集」中声用 右近義徳編 全音楽譜出版社1990 独唱
 資料11. 「改訂新版 高校生の音楽3」 音楽之友社 [2014] 独唱

合唱
 資料6. 「混声合唱組曲 沙羅」 木下保編曲 音楽之友社 1979 混声四部合唱
 資料7. 「女声合唱組曲 沙羅」 木下保編曲 音楽之友社 1982 女声四部合唱
 資料8. 「男声合唱組曲 沙羅」 木下保編曲 音楽之友社 2012 男声四部合唱
 資料9. 「女声合唱組曲 沙羅」 福永陽一郎 カワイ楽譜
 資料10.「混声合唱組曲 沙羅」 福永陽一郎
            [私家版 混声合唱団東京カントライ] 2000 (1974年編曲)

※曲の冒頭の調号♯♭の数を表示しています。


   丹沢  あづまやの 北秋の  沙羅    鴉   行々子 占ふと  ゆめ 
資料1 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料2 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料3 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料4 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料5 3♭ 3♯ 5♭ 5♭ 6♭ 1♭ 4♯ 4♯
資料6 1♯ 2♯ 1♭ 2♯ 3♯ 3♯ 1♯ 4♭
資料7 1♭ 2♯ 4♯ 4♯ 3♯ 4♭ 1♯ 1♯
資料8 1♯ 2♯ 1♭ 2♯ 3♯ 3♯ 1♯ 4♭
資料9 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料10 4♯ 2♭ 2♯ 2♯ 1♯ 6♯ 1♭ 1♭
資料11 -- -- 0♯ -- -- -- -- --


伴奏は6♯。合唱パートに「読み易いようにト調でかいてあるが演奏は伴奏どおり嬰ヘ調ですること」とある。
ハ長調。「原調はニ長調」の注記があり。

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春秋社版『信時潔合唱曲集』のp.74冒頭1小節バス「Solo」の表示が欠落しています。

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2012年12月23日に開催された演奏会「生誕125年 信時潔とその系譜」のプログラム冊子の正誤表です。


備考
39 我が国と音楽の
関係を思ひて
我国と音楽との
関係を思ひて
 
41 (曲名)ふるさとの山 (曲名)台湾の歌 訂正時のブログ記事
45-58 校歌一覧改訂版を、こちらに掲載しています。
59- 社歌・団体歌一覧改訂版を、こちらに掲載しています。
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『信時潔独唱曲集』(春秋社)の第10小節第1拍、ピアノ伴奏の C のナチュラル記号が欠落しています。
自筆譜にはナチュラルがあります。信時潔旧蔵の初版譜(大阪開成館1925)は、印刷はナチュラル欠落。
そこに赤鉛筆でナチュラル記号が書きこまれています。

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2015年11月、東京芸術大学の「海道東征」上演に際しては、自筆譜等関係資料を比較検討して
楽譜の明らかな間違いは訂正しました。その結果を楽譜上に反映させる作業を進めています。

次の上演に向けて、ヴォーカルスコアについては、訂正一覧の形にまとめました。
資料から明らかにできない、演奏上必要な事項の最終判断は、芸大上演時の指揮者・湯浅卓雄先生によるものです。

最新版   
Vocal-score訂正一覧20180321.pdf

旧版 Vocal-score訂正一覧20160614.pdf
            Vocal-score訂正一覧20160819.pdf
    Vocal-score訂正一覧20161010.pdf


なお、「海道東征」ヴォーカルスコア復刻版(アカデミア・ミュージック)については、こちらに掲載しています。
https://nobutoki.com/mug3ydcx0-106/#_106