No-b-log の・ぶ・ろぐ http://noblogblog.blog.shinobi.jp/で過去に掲載していた記事を、このサイト内に移行・アーカイヴしました。(但し、国内のゆかりの地を訪ねるシリーズは、こちら可能なものはURLの変更や、訂正も入れています。

No-b-log の・ぶ・ろぐ過去記事

2008年12月15日 00時00分

「花すみれ」と「はなすみれ」

CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』に収録された「花すみれ」(貞明皇后御歌)は、最初は女子学習院の歌として作られました。

その後、女子学習院の曲は作り替えられて、別の旋律となっています。それが「はなすみれ」 (すべて、ひらがなで表記します)

この曲は、学習院校友会サイトで聴く事ができます。
   https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/sumire.htm 

女子学習院という名の学校はなくなりましたが、今も学習院女子中等科・女子高等科の音楽の授業では、ゆかりの曲として「はなすみれ」をとりあげているそうです。(ということは、たぶん愛子さまも歌われるのでしょう)

ちなみに、学習院大学開設二年を記念して、昭和26年に作られた「学習院院歌」(安倍能成作詞)も信時潔作曲です。
  https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/inka.htm

さて、最初に作られた「花すみれ」は、女子学習院で使わなくなって、一般のレコードになったのですから、払い下げというか、リサイクルというか。したたかなのか、歌の魅力なのか、はたまた女学生の心を捕らえたのか、とその頃の経緯を知りたくなります。

初版のセノオ楽譜(前回の記事に写真あり)が大正13年5月発行。浅草オペラの名歌や「宵待草」を竹久夢二の表紙絵で売り出したほか大正末から昭和初年にかけて多くのピース楽譜を出していたセノオ楽譜です。皇后陛下の御歌を女学生の愛唱歌にというセノオ楽譜のもくろみもあったのではないかと思います。

山田耕筰作曲の「花すみれの御歌」もセノオ楽譜で、独唱曲が大正15年にでています。二部合唱、三部合唱も山田耕筰作曲として、セノオ楽譜から出版されていますが、実は旋律は・・・という不思議な話は、解説p.16に書いた通りです。

信時の「花すみれ」「はなすみれ」と、山田耕筰の「花すみれの御歌」の聴き比べコンサートというのも、面白いかもしれません。

2008年12月10日 00時00分

花すみれ

『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の、DISC-1の冒頭と、DISC-6にも入っている「花すみれ」については、これまで詳しいことを調べたことがなく、今回の準備のために調べれば調べるほどいろいろなことがわかりました。この曲だけ長く書くわけにもいかず、添付の解説書では、かなり短くまとめましたが、詳しく書けばひとつの論文がかけるほどではないかと思います。 なぜ、二種の「花すみれ」「はなすみれ」があるのか?山田耕筰の「花すみれの御歌」との関係・・・etc。

今回の解説書はモノクロなので、カラーが出なくて残念でしたが、hanasumire1forWEB.JPG
p.17の唱歌『花すミれ』の表紙は、右のように紫と白とピンクという彩りの、
そんなお菓子がどこかにあったと思い出させるような色合いです。
どう云うわけか、この初版譜は、信時家に残っていないのですが、最近、偶然入手しました。

この曲は、ピースのほかにもいくつかの合唱曲集にも収録され、大正~昭和初年の女学生に愛唱されたようです。

2008年12月8日 00時00分

最後の一枚「東北民謡集」ポリドールS-2017

このCD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 は、最初は7月末に発売される予定で、発売情報が一旦流れましたが、諸般の事情で延期となり、ついに11月19日に発売になりました。

実は、延期されたおかげで、加えることが出来た、「最後の一枚」のSPレコードがありました。

DISC4 の 東北民謡集 の二枚のSPのうちの、ポリドールS-2017でした。
ポリドールS-2016は、作曲者の遺品の中に残っていましたが、レコードの袋やカードはありません。
当時のポリドールのカタログの所在がわからず、詳細を確認することができずにいました。

どのような形で企画、発売されたのかは、当時のレコード評を見るしかなかったのですが、どうも信時作品が二枚あったらしいということがわかってきました。
SPレコードは、どこかに残っているのか、いないのか?それとも、レコード評の書き方が曖昧で、情報の読み取り方を間違えているのか?

そして、郡修彦氏の執念の探索の結果、ついに、最初の発売予定日を過ぎた8月になって、幻の 「ポリドール S-2017」が見つかったのです。

東北民謡集は、花岡千春先生が、CD『花林/雨の道』に録音しています。その時も、作曲当時の音を参考にしたいということで探していたのです。(残っている楽譜には書き込みも多く完全な形で残っていないため、作曲者の目が通った初演時の楽譜、および録音を探しましたが当時は入手できませんでした。)

録音も別冊解説書も、もうほとんど仕上がっていたのですが、この機会をのがしては、録音・復刻のチャンスはないかもしれない、ということで、ついに追加収録されることになったのでした。

2008年12月8日 00時00分

楽譜『国民合唱』(日本放送出版協会)内容一覧

CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 解説書p.102(Disc 5-14 此の一戦)に、『国民合唱 第一輯』の表紙写真を載せています。
この楽譜は、信時潔旧蔵資料には含まれていませんでしたが、図書館等で複数確認できました。
ところが、表紙がきれいな状態で保存されているものがなかなか見つからなかったため、空席通信というサイトで国民合唱のことを書いていらして、 『歌と戦争』などの著書もある櫻本富雄先生から拝借しました。本CD集の編集途中はとても余裕が無く伺えなかったのですが、完成後にご挨拶にうかがったところ,CD集の完成を大変喜んでくださいました。編集過程で、とくに戦時下の作品をどのように考えるか、どう扱うか、悩んでいた折に、櫻本先生の言葉に励まされたことは「解説執筆を終えて」にも書きました。

さて、その櫻本先生に完成のご挨拶に伺った日、帰りがけに、もう使わないので資料を生かせる方に使って欲しい、と、『国民合唱』『国民歌謡』の楽譜一式を頂戴しました。発行当時は紙の質が悪いため劣化は激しく、扱いには気を使います。

国民歌謡からラジオ歌謡までの先行研究はいくつかあり、とくに詳しく調査した『国民歌謡ラジオ歌謡大全集』については、以前「国民歌謡」の項で書きました。

楽譜『国民合唱』の内容一覧というのは、あまり世間に公開されていないようですので、ここに書き上げておきます。

楽譜『国民合唱』(日本放送出版協会) 内容一覧


    歴史的かな遣いはそのまま生かしました。
    漢字は人名以外(一部例外あり)は、新字体に置き換えました。
    曲名、作詞作曲者等は、楽譜中の表記に従いました。
    ※印は、手元に無いため、日本近代音楽館所蔵資料で確認して補いました。
 
国民合唱 第一輯KokuminGtrim.JPG
 (日本放送出版協会 昭和17.7)

 海ゆかば 万葉集大伴氏言立 信時潔作曲
 此の一戦 大政翼賛会標語 信時潔作曲
 僕等の団結 勝承夫作詞 信時潔作曲
 朝だ元気で 八十島稔作詞 飯田信夫作曲
 世界の果までも 相馬御風作詞 弘田龍太郎作曲
 敵塁陥落 堀内敬三作詞作曲


国民合唱 第二輯
 (日本放送出版協会 昭和17.11)
KokuminG-03trim.JPG
 産業乙女  恩田幸夫作詞 高木東六作曲
 箱根八里  中学唱歌 片山頴太郎編曲
 忠霊塔の歌  百田宗治作詞 片山頴太郎作曲
 夏は来ぬ  佐佐木信綱作詞 小山作之助作曲 片山頴太郎編曲
 今年の燕  安藤一郎作詞 弘田龍太郎作曲
 山の牧場  北村秀雄作詞 池譲作曲
 

国民合唱 第三輯
 (日本放送出版協会 昭和17.12)

 若い力  恩田幸夫作詞 岡本敏明作曲
 南へ進む日の御旗  堀内敬三作詞 小山作之助作曲 信時潔編曲
 一日の汗をぬぐひて  恩田幸夫作詞 福井文彦作曲
 仕事の前に  勝承夫作詞 平井保喜作曲
 海は高鳴る  喜志邦三作詞 平岡照章作曲KokuminG-03trim.JPG
 我は海の子  文部省新訂尋常小学唱歌


国民合唱 第四輯 ※
 (日本放送出版協会 昭和18.3)
  つばさの力  佐藤惣之助作詞 古關裕而作曲
 かどでの朝  勝承夫作詞 信時潔作曲
 来れや来れ  外山正一作詞 伊澤修二作曲 信時潔編曲
 胸を張って  大政翼賛会宣伝部作詞 弘田龍太郎作曲
 雲に寄せる  安藤一郎作詞 弘田龍太郎作曲
 子を頌ふ  城左門作詞 深井史郎作曲


国民合唱 第五輯
 (日本放送出版協会 昭和18.5)

 必勝の歌  深尾須磨子作詞 福井文彦作曲KokuminG-05rim.JPG
 アリューシャンの勇士  西條八十作詞 大中寅二作曲 
 木炭の歌  深尾須磨子作詞 弘田龍太郎作曲
 帆綱は歌うよ  前田鐵之助作詞 久保田公平作曲
 富士山の賦  八波則吉作詞 長谷川良夫作曲
 試練の時  勝承夫作詞 岡本敏明作曲


国民合唱 第六輯
 (日本放送出版協会 昭和18.8)

 飛行機は今日も飛ぶなり  酒徳宗三作詞 西條八十補作 信時潔作曲
 母に捧ぐ  福田傳吉作詞 池譲作曲
 潜水艦の歌  堀内敬三作詞作曲
 御民の歌  大木惇夫作詞 山田耕筰作曲
 連峰の雲  尾崎喜八作詞 山田耕筰作曲


国民合唱 第七輯
 (日本放送出版協会 昭和18.11)
KokuminG0006trim.JPG
 みたみわれ  海犬養岡麿作歌 山本芳樹作曲
 海軍航空の歌  海軍航空本部撰歌 海軍軍楽隊作曲
 密林行  佐伯孝夫作詞 大中寅二作曲
 こころゆたかに  北村秀雄作詞 大中寅二作曲
 こひのぼり  與田準一作詞 片山頴太郎作曲
 母の顔  林柳波作詞 片山頴太郎作曲


国民合唱 第八輯 ※
 (日本放送出版協会 昭和19.4)

 落下傘部隊進撃の歌  堀内敬三作詞 山田耕筰作曲
 征くぞ空の決戦場  井上康文作詞 高木東六作曲
 航空決戦の歌  勝承夫作詞 安倍盛作曲KokuminG-07trim.JPG
 海の歌  安藤一郎作詞 平井保喜作曲
 輸送船の歌  佐伯孝夫作詞 伊藤昇作曲
 御朱印船  北村秀雄作詞 清瀬保二作曲


国民合唱 第九輯 ※
 (日本放送出版協会 昭和19.4)

 大アジヤ獅子吼の歌  日本文学報国会、日本音楽文化協会献納
 学徒進軍歌  西條八十作詞 橋本國彦作曲
 学徒空の進軍  吉田健次郎作詞 大内福三郎作曲
  やすくにの  大江一二三作詞 信時潔作曲
 勝ちぬき太鼓  岡本一平作詞 中山晋平作曲
 実り  野口雨情作詞 佐々木俊一作曲


国民合唱 第十輯 ※
 (日本放送出版協会 昭和19.9)
 
撃滅の誓  大木惇夫作詞 山田耕筰作曲
 大航空の歌  西條八十作詞 佐々木俊一作曲
 十億の団結  勝承夫作詞 片山頴太郎作曲
 戦ふ花  深尾須磨子作詞 橋本國彦作曲
 海上日出  土岐善麿謹作詞 信時潔謹作曲
 常在戦場の歌  土岐善麿作詞 久保田公平作曲
KokuminG-11trim.JPG

国民合唱 第十一輯
 (日本放送出版協会 昭和19.10)

 南海の神鷲  佐伯孝夫作詞 福井文彦作曲
 銀翼に祈る  北村秀雄作詞 草川信作曲
 空の父空の兄  與田準一作詞 名倉晰作曲
 少年兵を送る歌  大日本青少年団制定
 輸送船行進歌  運輸通信省海運総局撰定 
 突撃喇叭鳴り渡る(一億総決起の歌)  大政翼賛会撰定


                          以上  

2008年12月7日 00時00分

国民歌謡

昨日のラジオ歌謡に続いて、今日は国民歌謡について、書きます。B226-hyoshi-WEB.JPG

ラジオ歌謡は戦後スタートしたものですが、その前身というべきものが「国民
歌謡」~「われらのうた」や「国民合唱」として放送・発表されたものです。

信時潔の作品で、「国民歌謡」として「出版された」楽譜は

国民歌謡 第37輯 国に誓ふ ☆
国民歌謡 第50輯 興亜奉公の歌 ☆
国民歌謡 第61輯 新政讃頌
国民歌謡 第66輯 蘭花の頌(満州国皇帝陛下奉迎歌)

それから、当時作曲者は公表されていませんでしたが
国民歌謡 第56輯 紀元二千六百年頌歌 ☆
(☆印は、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 に収録)

また、出版譜は、国民歌謡のシリーズとしては出ませんでしたが、
「海ゆかば」も国民歌謡の時間帯に放送されたようです。

国民歌謡から、昨日話題にしたラジオ歌謡までをとりあげた、立派なCD全集が出ていて、
ことに別冊解説書の資料的価値は高く、今までの調査で、ずいぶん利用させていただきました。

国民歌謡ラジオ歌謡大全集
コロムビアファミリークラブ
CD10枚組・全200曲
◎全曲歌詩掲載の別冊解説書つき ◎特製ケース入り
◎制作/コロムビアミュージックエンタテインメント(株)
販売価格:25,200円(税込)
 

そのほかに「国民歌謡~われらのうた」を取り上げた、以下のようなCDも出ています。

昨日のラジオ歌謡に続いて、今日は国民歌謡について、書きます。B226-hyoshi-WEB.JPG

ラジオ歌謡は戦後スタートしたものですが、その前身というべきものが「国民
歌謡」~「われらのうた」や「国民合唱」として放送・発表されたものです。

信時潔の作品で、「国民歌謡」として「出版された」楽譜は

国民歌謡 第37輯 国に誓ふ ☆
国民歌謡 第50輯 興亜奉公の歌 ☆
国民歌謡 第61輯 新政讃頌
国民歌謡 第66輯 蘭花の頌(満州国皇帝陛下奉迎歌)

それから、当時作曲者は公表されていませんでしたが
国民歌謡 第56輯 紀元二千六百年頌歌 ☆
(☆印は、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 に収録)

また、出版譜は、国民歌謡のシリーズとしては出ませんでしたが、
「海ゆかば」も国民歌謡の時間帯に放送されたようです。

国民歌謡から、昨日話題にしたラジオ歌謡までをとりあげた、立派なCD全集が出ていて、
ことに別冊解説書の資料的価値は高く、今までの調査で、ずいぶん利用させていただきました。

国民歌謡ラジオ歌謡大全集
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CD10枚組・全200曲
◎全曲歌詩掲載の別冊解説書つき ◎特製ケース入り
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販売価格:25,200円(税込)
 

そのほかに「国民歌謡~われらのうた」を取り上げた、以下のようなCDも出ています。

 

 

2008年12月6日 00時00分

新憲法施行記念国民歌「われらの日本」 その2

土岐善麿作詩、信時潔作曲「われらの日本」の、初演当時使われた楽譜が、見つかりません。
どなたかお持ちの方は、いらっしゃいませんか?

1947年5月3日、宮城前の広場の憲法施行記念式典で、この曲を歌ったのは東京音楽学校、武蔵野音楽学校、国立音楽学校の生徒350名だったようですが、その楽譜が保存されていないのです。

当時のことですから、全国すべてではないにしても、小・中学校で歌ったり楽譜が配られたり、ということもあったはずです。けれども、音楽学校や役所の書類としては最初の印刷譜が残っていないようなのです。(二次資料は確認済)

「われらの日本」のSPレコードの反対側の面には、中山晋平の「憲法音頭」が録音されています。
これについては、入念な調査の結果が一冊の本となっています。
 和田登著 『踊りおどろか「憲法音頭」―その消えた謎の戦後』 (本の泉社 2006)

記念式典の後、5月8日から、憲法普及会制定「われらの日本」が、『ラジオ歌謡』として放送されています。演奏者は酒井弘、東京放送合唱団。
なお、ラジオ歌謡については、最近「ラジオ歌謡研究会」が熱心に調査・研究、普及活動をされているようで、同会の研究誌『ラジオ歌謡研究』は2007年創刊。同会会長・工藤雄一編の楽譜『思い出のラジオ歌謡選曲集』 (全音楽譜出版社)も発行されています。

2008年12月5日 00時00分

新憲法施行記念国民歌「われらの日本」 その1

2年半という時間をかけてようやく送り出したCDが発売となっても、目の前で売れていくわけではないのでなんとなく、実感がありません。なので、Amazon の サイトを見て「在庫何点」とかAmazon.co.jp ランキング: 音楽で9,482位(本日現在)なんていうのを見てささやかな励みにしております...(笑)....

ところで、そのAmazonサイトで見てあらためてびっくりしたのは「収録時間: 430 分」というもの。なるほど、CDをお届けしたご協力者の皆様から、「まだ聴いてませんが、ありがとう」といわれるのも仕方ない。私は仕事なので、何ヶ月もかけて(主に往復の通勤電車の中で!)各曲を何度も聴きましたが、普通は一気にそんなに聴けませんね(納得。)

さて、その430分の最後に、新憲法施行記念国民歌「われらの日本」を配したのは、私のこだわりです。
代表作といわれている「海道東征」や「海ゆかば」を最後に、という意見もありましたが、是非そうしたいという私の意見を入れてもらいました。

ひとつには、「戦後一切作品を発表しなかった」という一般に流布している説と、事実は違うということを押さえておきたかった。もちろん、あの戦争が終わった時、複雑な「想い」はいろいろあったでしょう。だからといって、作品を発表しないとか、そのような単純な形をとるような人ではなかった。戦後は新しい世代を応援し、その活躍を見守りながらも、頼まれた仕事では、嘘のない自分の音楽を書いていたのではないかと思います。

最近「海ゆかば」「海道東征」だけで語られている感のある信時潔は、一方で新憲法施行記念国民歌「われらの日本」の信時潔だった-----そこで、何か気づいてくださる方もあるかという想いもありました。

(つづく)

2008年12月4日 00時00分

インレイカードデザイン

続いて『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 の外側の話。
中に入ってる各CDのケース内のカード(インレイカードと言うそうです)のデザインについて。
これも奥付に書きましたが。

共益商社書店の初版譜のイメージから作りました。
渋めの地色に、タイトル部分は白抜き。それだけ。・・・・というこのシンプルさ。

今となってはその事情を確かめることは出来ませんが。
私は信時潔という人の趣味だろうと直感しました。

遺作の「女人和歌連曲」の出版譜は没後に作られたもので、鮮やかな赤に近い橙色。
本人が関わらなかったこの例などと比べると、尚更そんな気がしてきます。

共益商社書店は昭和10年前後の出版譜ですから、いくら状態の良い物でも
幾分の色あせはあって、本当はどんな色だったのか、わかりません。

また、インレイカードにするにあたって、出来るだけ近い色を選んだつもりですが、
印刷時の色の出具合も難しいもので。

DISC-1 から DISC-6まで、それぞれ
桜花の歌、鶯の卵より、独楽吟、沙羅、紀の国の歌、やまとには
の色を使っています。

桜花の歌は当然「さくら色」。鶯の卵よりは「うぐいす色」。沙羅は渋い「藍色」。
独楽吟は日本の伝統的な「むらさき色」。紀の国の歌と、やまとにははそれぞれ緑色ですが、
微妙にトーンが違っています。

カラー写真でも、なかなかこれらの色は表現できません。

新響社の出版譜も、並べてみると、いかにもシンプルで「信時潔らしい」と思えます。

いつかどこかで、初版譜の実物をごらんになる機会がありましたら、思い出してください。

2008年12月3日 00時00分

外箱デザイン

まずはじめに、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 外側の話から。

外箱デザインは、解説書の奥付にも書いたとおり、解説担当者が個人的に持っているbox-for-web.JPG作曲者信時潔の遺品からデザインしています。 ナントカ織りという名前もあるのでしょうけど、特別ないわれがあるようなものではない、 ほんとうにごく普通の着物です。

昔の人は日常に着物を着ていたものです。
私の父も、その父=つまり信時潔の形見分けにもらったらしい着物なども着ていた時期がありました。外出用ではありませんでしたが、お風呂上りなんかに、ちょっと引っ掛ける感じで。
昭和40年代も後半になってからは、父も着物を着なくなりました。
着物のおじいちゃん=信時潔のイメージがあるのは、本当の記憶なのか、写真などであとから記憶されたものか、わからないのですが。

ごく普通、普通過ぎるほど普通の。ぜんぜん気取らない感じが出ればそれでいいかなと思って、着物の柄から外箱デザインをしてもらいました。箱のデザインは通称お弁当箱スタイルというそうで、発売元の財団がしばしば使用する得意のスタイルです。コンパクトにまとまるし、本棚に置いてもいいかもしれない、と思ってこれにしてみました。

外箱の表にある題字の「信時潔」は、本人のサインによるものです。わりとよそ行きに書いたもので、日常の筆跡とは違う感じです。 

2008年12月1日 00時00分

ブログスタート

当面は、このたび発売されたCD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の編集・制作の裏話などを思いつくままに。そのほか周辺雑記を書いていきます。気楽におつきあいください。